松井正一 命
昭和二十年八月九日
フィリピン群島北部ルソン島にて戦死
上新川郡大山町出身
遺言状
注・遺言状と遺髪同封
〔松井孫三郎様宛遺言状〕(朝鮮第二十七部隊にて)
父上、正一モ遂ニ陛下ノ御為一命ヲ捧ゲル時ガ参リマシタ。今ニシテ想ヘバ幼少ニシテ生母ニ別レ、中等学校ヲモ卒業サシテ戴キ、其ノ間ノ父上ノ御労苦ヲ察シ、誠ニ有難ク、感謝致シテ居リマス。不肖二十余年ノ生涯ハ何等為(な)ス処ナク過ギ去リシハ実ニ申訳ナク存ジテ居リマス。
然シ今玆(ここ)ニ大君ノ御楯トナル吾ハ大ナル矜(ほこり)ト満足トヲ感ジテ居リマス。我々日本人ハ祖先ヨリ受継タル見エザル力、大和魂(やまとだましい)ガ有リマス。不肖ノ死ニ依リ国家ヲ怨ム事ナク「好クヤツタ」ト褒メテ戴キ、我ガ祖先ガ先輩ガ血ヲ流シテ築キ上タルコノ国土ヲ守リ、大理想実現ノ為奉公シテ下サイ。御願ヒ致シマス。
正一ノ銘ハ「誠」デアリマシタ。誠アル者ハ強シ。誠トハ「正直」「良心ニ恥ザル事」デアリマス。今迄ノ自分ハコノ域ニ達シ得ナカツタ事ガ恥カシクアリマス。ドウカ正信ニモ此ヲ銘トシテ進ムヤウ云テ下サイ。
最後ニ父上、皆様ノ御健勝ヲ御祈リ致シマス。
昭和十八年十二月四日
松井正一㊞
〔墨書〕
誠心
昭和拾八年拾弐月四日
松井正一